大道断髪式
去る平成二十八年六月四日、両国国技館において大道の断髪式が挙行された。
この日は朝から気持ちの良い晴天に恵まれ、国技館二階外広場のさつきが綺麗に咲き誇り、大道断髪式を祝うかのような絶好の日和。一階ロビーにて親方・おかみさん、大道夫妻、そして阿夢露関・逸ノ城関・貴ノ岩関・佐藤関等が出迎えを受けて、多くの参加者が三々五々詰めかけた。
土俵の周りに椅子席が設えられた会場では、お馴染みとなったアルパ奏者KAYOさんが珍しく和服で、「ふるさと」や「夏の思い出」などこの季節にあった曲で参加者を出迎えた。
午前十一時、司会のNHKアナウンサー吉田賢氏が開式を宣言。行事玉次郎の先導で親方・大道が入場し、土俵上にて参加者にまず深謝の意を込めて深々とおじきをした。引き続き大道の出身校専修大学理事長日髙義博氏が挨拶に立ち、大道のこれまでの活躍を讃え、今後も親方として専修大学出身の誇りを持って精進してほしいと述べた。
続いて大至さんが大道の相撲人生を甚句に乗せて、以下のように歌い上げ会場を魅了した。
♪『大道引退小野川襲名記念甚句』
ハァーエー
歩んだ道のり 悔いなき土俵 ヨー
葛飾生まれの少年は
大横綱・貴乃花に憧れて
姉の勧めで稽古場に
通う白鳥相撲教室
目黒高校 専修大
輝く実績残しつつ
阿武松部屋へと入門す
序の口 序二段全勝と
拍車を掛けた出世道
「されど」
優しい性格 足踏みに
師匠からの愛の鞭
心でしっかりうなずくも
悔し涙でにじむ空
落ち込む背中を 頑張れと
支えてくれた女将さん
顎の怪我から奮闘し
翌年大阪 新十両
母に捧げた晴れ姿
付いた四股名は 『大道』と
憧れの幕内 夢 果たす
砂にまみれた歳月も
充実した相撲生活だったと
静かに土俵を後にした
甘えばかりのこの俺を
励ましてくれた相撲道
今後は部屋に恩返し
強い力士を育てます
小野川襲名断髪式
溢れる涙を噛み締めて
感謝の土俵ヨーホホイ
アーありがとうヨー ♪
続いて吉田アナから大道のプロフィールが以下のように紹介された。
「大道健二。本名中西健二。昭和57年8月21日生れ、東京都葛飾区出身。
小さい頃から体が大きかった中西生年は、兄姉の影響もあり小学校4年生のときから、葛飾白鳥相撲道場で佐久間先生のご指導のもと、相撲を始めました。5年生、6年生でわんぱく相撲東京都大会で優勝しました。
四股名の由来になった大道中学校に進学、3年生で全国中学校相撲大会でベスト8になりました。
目黒学院高校では3年生のときに、全国高校相撲選手権大会で個人ベスト16に。
専修大学では大野監督のもと、4年生で東日本学生個人体重別選手権大会の無差別級で優勝しております。
小学4年生から大学まで相撲をやってきて、自分の相撲の実力がどのくらい通じるかやってみたくなったというのがプロ入りの動機でした。そして自分は厳しい親方のもとでないとダメだという正しい判断をし、阿武松部屋に入門したのが、いまから11年前の3月のことでした。
入門後、序の口、序二段と優勝しましたが、すぐに三段目で負け越し、ここで自分の実力がわかったそうです。そこからは阿武松親方の指導のもと、平成22年3月場所で新十両、平成23年7月場所で新入幕となりました。
11年間での本人にとっての思い出の一番は、平成22年一月場所、幕下西3枚目で3勝3敗で迎えた千秋楽の一番で、相手は巨漢の山本山でした。勝てば十両昇進が決まる一番の前日、緊張しているところに師匠から食事に誘われ、普段は取り組みの作戦など言わない師匠から、「明日はどういうふうに相撲を取るのか?」と聞かれ、「もろ差しを狙います。」と答えると、師匠は「頭から当たって上手を取ったらすぐに上手投げを打て」と言われました。
当日とても緊張していましたが、やることが決まっていたため、気持ちを落ち着かせることができ、山本山に思い切り頭から当たって前に出て、すぐに得意の左上手が取れたので、思い切って上手投げを打ち勝つことができました。自分が十両に上がれることが信じられませんでした。
平成24年9月場所で自己最高位の前頭東8枚目になりました。その後関取の座を6年間守ってきた大道でしたが、相次ぐ怪我との闘いもあり、ついに平成28年1月場所を最後に引退し、年寄小野川を襲名いたしました。
小学校の大会から、お父さんとともに応援に駆けつけてくれた大道の母、中西由美子さんは、大道が大学2年のときに、ガンで他界されていますが、今日、この国技館のどこかで、晴れ姿を見ていらっしゃることと思います。」
吉田アナがプロフィールを読み終えると、会場のあちこちから「大道」というかけ声がかけられた。
さてここでいよいよ断髪の儀に入り、阿武松部屋名誉顧問荒木勇氏を皮切りに、衆議院議員平沢勝栄氏、参議院議員公明党代表山口那津男氏、衆議院議員富田茂之氏、阿武松部屋千葉後援会会長鈴木喜代秋氏、同東京後援会会長黒須弘道氏、同名古屋後援会会長森下鉾二氏、学校法人専修大学理事長日髙義博氏、同副理事長富山尚徳氏、同校友会会長小宮多喜次氏、同名誉会長甘竹秀雄氏、千葉工業大学理事長瀬戸熊修氏、阿武松部屋大阪後援会顧問西條利幸氏、同理事寺本正尚氏、阿武松部屋町田後援会代表小山修氏、公益財団法人日本相撲連盟副会長南和文氏、同専務理事大野孝弘氏(大道の専修大学時代の相撲部監督)、同常務理事安井和男氏、西日本学生相撲連盟理事長勝田晃三氏、埼玉栄高校相撲部監督山田道紀氏、専修大学相撲部監督蒲田重勝氏、同元監督相撲部OB会長谷外嗣氏、葛飾白鳥相撲道場代表佐久間幸一氏、WBC世界バンタム級王座山中慎介氏(大道の専修大学同級生)、と次々にハサミを入れた。
ここで小野川親方が土俵下に位置を変え、女性の方々の断髪に移り、まず故北の湖理事長夫人小畑富子さん、衆議院議員平沢勝栄氏夫人平沢礼子さん、東京後援会会長夫人黒須典子さん、貴乃花親方夫人花田景子さん、中山大三郎事務所代表・故中山大三郎氏夫人中山三佐子さん、大阪後援会顧問西條利幸氏夫人西條広美さん、女優白石まるみさんががハサミを入れた。
引き続き土俵に戻り、財団法人日本相撲連盟、東京都相撲連盟、千代田区相撲連盟、石川県相撲連盟、能登町相撲連盟などアマ相撲関係の方々、阿武松部屋後援会の方々、知人・友人・地域の方々、小野川親方と夫人知代さんの親族・関係者がハサミを入れ、また土俵下に移って、一般女性の方々が次々とハサミを入れ、女性の最後として小野川親方の姉千葉麻由子さんが、お母様の写真を手渡し、気持ちをひとつにしてハサミを入れた。
断髪の儀もいよいよクライマックス。土俵中央に戻り、かつて寝食を共にした元十両益荒海の黒澤幸太氏、同じく元十両丹蔵の寺下隆浩氏、元若駿河の加藤善丈氏、元幕張の福本孝史氏、元能登櫻の島和也氏、元大瑠璃の斎藤拓也氏、そして阿夢露関、不知火親方がハサミを入れ、続いて公益財団法人日本相撲協会の関係者として、床山、呼び出し、世話人、幕下力士、十両・幕内の関取衆、引退した元関取の方々、貴乃花親方をはじめとする親方衆がハサミを入れ、小野川親方の兄中西敏樹氏、父敏夫氏がハサミを入れ、最後に師匠阿武松親方が止めバサミを入れ、大銀杏を高々とかざして、およそ500名にもおよぶ断髪の儀は終了した。
最後に阿武松親方が挨拶に立ち、「大道改め小野川が、こうしてこの場に立てるのも、故北の湖親方・おかみさん、そして貴乃花親方はじめ、多くの先生方、ご支援頂いた多くの方々のお陰であることをしっかりと自覚し、その恩に酬いるためにも、今日から甘い考えを一切捨てて、あらゆることに責任を持って堂々と立てる男に成長してほしい。」と述べ、断髪式は滞りなく終了した。