新春書き初め大会
去る一月五日の稽古後に、恒例の新春書き初め大会が催された。平成十四年一月から始めた書き初め大会も今回で十五回目を数え、すっかりお馴染みとなった。
まず親方が筆を執り、今年は「努力の年」と書いた。自身はもとより弟子達にも望む言葉であろう。
次に不知火親方は「進」と書いた。親方としての協会の仕事、部屋での仕事に、進化しつつ前に進むとの思いである。小野川親方は「孝悌忠信」と書いた。儒教の教えで、親に孝行をし、目上の者の言葉に随い、忠実で信義に篤いことを意味するが、特に親方の言葉を身に体して欲しい。
阿武咲関は「現状打破」と書いた。小さな故障もあってなかなか幕内の壁を越えられない現状を、何とか打破したいとの思いである。阿夢露関は「蘇る」と書いた。いつもながら独特な味のある字である。去年は不本意な一年となってしまったが、強い気持ちを持って再入幕をはたす決意であろう。
この後各力士達が、以下に掲げたように次々に今年にかける思いを筆に託した。各力士の思いは「おかみさん日記」に紹介されているので、そちらもご覧頂きたい。
力士達に混じって、この日稽古見学に来られていた女優の白石まるみさん、作曲家故中山大三郎夫人中山美佐子さんも立派な書を披露した。白石さんは実に堂々とした字で「断捨離」と書いた。どうも今年は大きな転換を期しているようで、そのためにはまず、今までの様々なものを断ち、捨て、離れるということのようである。新生白石の年となりますように。中山夫人は「人生いろいろ」と書いた。女性らしく、また端正で素直な字である。ご存じ大三郎先生が作詞された島倉千代子さんのヒット曲の題名。山あり谷ありの人生を、それぞれの持ち味で楽しんで生きていくんだよ、との先生のメッセージである。
おかみさんは「朗らか」と書いた。多くの力士達をサポートしていくには、時として苦しく、またひそかに涙することもあるだろうが、部屋がいつも明るく元気なのは、おかみさんの朗らかな笑顔があるからである。こちらも端正で素直な字ですね。
床貴は「見義不為無勇也」――「義を見てせざるは勇無きなり」と書いた。論語の言葉であるが、正義感を持ち、かつ実行力を持てとの意。むつかしいことだが誰しもこうありたいもの。床雄は「縁」と書いた。今年大人の仲間入りをした床雄だが、いろいろな方々とのご縁を大切にし、人として、そして床山として、立派に成長して欲しい。